5.将来計画及び運営方針
法人化から3年が経過したが,まだ完全に軌道に乗ったとは言えない状況である。国の厳しい財政状況をも踏まえ, 基礎科学の更なる発展を目指して研鑽と努力を重ねる必要がある。
分子研における各施設・センターの現状と将来計画,組織の見直しと再編の検討等の議論が進められ,次ページ以 降にそれらが詳しく纏められている。前者については,分子スケールナノサイエンスセンターの 920MHz NMR の有効 活用が進んでおり成果が挙がっていること,計算科学研究センター(岡崎共通研究施設)に新しいスーパーコンピュー ターが導入され,通常では実行不可能な大型計算を可能とすること,極端紫外光研究施設においてトップアップ運転 等を行い研究の質を更に高めること,装置開発室で所外からの注文をも受ける体制を拡充すること,等々が主な事項 である。また,組織再編等については,検討委員会での議論を踏まえて,現在の研究系と施設を4領域(理論・計算 分子科学,光分子科学,物質分子科学,生命・錯体分子科学(仮称))に再編すること(平成19年度実施予定),及び, 一部教授への助手2名の配分などの具体的検討が始まっている。
国際共同研究では,アジア・コア・プログラムが認められ,従来分子研が独自に行ってきている分子科学国際共同研 究計画と共にこれを有効に活かし,アジアに於ける基礎科学の振興と共同研究の推進を押し進め,世界における分子科 学拠点としての活動を深めたい。また,予算の関係で中断されていた岡崎コンファレンスを復活する予定でもある。
平成17年度概算要求で認められた連携融合事業である「エクストリーム・フォトニクス」,及び,委託事業として進 めている「ナノ総合支援プロジェクト」は共に順調に成果を挙げつつある。一方,NA R E GI 事業は平成18年度から,国 家プロジェクトとしての「最先端・高性能汎用スーパーコンピューターの開発利用」に衣替えして新たなスタートを切っ ている。分子研はそのグランドチャレンジアプリケーションで学術的基礎研究の責任を全うすることになっている。
最後に,「化学系汎用機器全国・地域共同利用ネットワークの構築」の計画を全国の国立大学の化学系機関との協力 のもとに現在進めている。国の財政状況の悪化に伴い,研究の基盤を支える汎用機器の拡充が十分に出来ない状況に なっている。この状況を少しでも改善すると共に機器の効率的利用を行うために,「既存機器の復活再生」と「新規機 器の重点的購入」の計画を進めている。全国を12地域に分割し,復活再生機器も新規購入機器も地域毎(場合によっ ては全国規模)の共同利用に供することを必須条件として取りまとめ,概算要求を行なう計画である。分子研独自の 平成19年度新規概算要求としては,昨年度同様「触媒分子科学の推進と情報発信」(北大触媒化学研究センターとの連 携)及び「超高磁場核磁気共鳴装置の周辺整備とそれによる機能性分子開拓」(拠点形成)を予定している。
5-1 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構分子科学研究所分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目的と して「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の開発 及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに,ナ ノサイエンス研究に必要かつ共通性のある物性機器,研究設備の集中管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利 用に供し緊密な連携協力の下で共同研究等を推進することを目的とする。」との記載がある。即ち,センターは「ナノ サイエンス研究を行う」機能と,「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設備等の集中管理・共同研究の推進」 という機能が要求されていることになる。
以下の方法でこの二つの機能を果たすことができると考えている。
5-1-1 ナノサイエンス研究の推進について
・研究グループ毎の独自テーマの遂行とセンター内外での共同研究の推進
ナノサイエンスという言葉は非常に広い意味を含んでおり,必ずしもその概念範囲が確立したものではない。ナノ サイエンスセンターの研究教育職員は,様々な研究のバックグラウンドを持っており,そうしたバックグラウンドを 元にして,自由な発想を堅持しながら,ナノサイエンス上の共通課題に取り組む共同研究を行うことで,分子研独自 のナノサイエンスの創出が可能になると考えている。共通課題を探索する仕組みとして,今年度からナノセンターに おいては定期的に研究交流会を行い,各研究グループからの最新の研究成果の紹介とフリーディスカッションを行う ことにした。この中で出た共同研究の萌芽を育てる仕組みを作ることが必要となるであろう。
ナノサイエンスセンターを構成する三研究部門は,それぞれ下記のように独自テーマを遂行する。
[分子金属素子・分子エレクトロニクス研究部門]
分子スケール電子素子とは,一つの機能単位が分子レベル(~1 nm 程度)の電子素子の総称である。その実現はナノ サイエンスの代表的な課題であり,集合体の性質によらない一つの分子の電気特性を明らかにする,分子や無機ナノ 構造体の高次の自己組織化を制御する,バルク電極と有機・無機ナノ構造体の界面の状態を明らかにするなど基礎科 学的に重要な課題を含むと同時に,将来の超微細電子素子の基礎を築くという応用面での重要性も併せ持っている。こ れを実現するためには,合成化学,物性物理,ナノ電子計測,表面科学,計算機科学,数学など幅広い分野の研究者 の協力が必要であり,これまでの科学の分野を横断したフロンティア分野であることは明らかである。
本研究部門においては,このような視点の元で次のような具体的課題を,3つの研究グループで行い,分子スケー ル電子素子という新分野を開拓する。
(1)高性能の電気特性を示す新規有機分子の開発
集合体レベルでキャリアー移動度の高い分子の設計・合成,単分子レベルで高電導性を持つ分子の設計・合成,単 分子レベルで光応答性,電界発光能を持つ分子の設計・合成と,それら分子の素子化と物性の研究を行う。また,新 規の無機ナノ構造体の開発および,無機・有機ナノ構造体の高次複合系の研究も行う。
(2)有機分子の電子素子化における課題の解決
有機分子と電極界面の解析,制御の研究。新たなナノレベルの電極作成法の開発,有機・無機ナノ構造体の高次自 己組織化の制御などの研究を行う。
(3)単分子電子計測に必要な分子設計,合成,新規計測手法の開発
単分子計測が容易になる分子の設計,合成,ならびに新規のプローブ顕微鏡の開発などの計測手法の研究を行う。 更にこうした新たな分子系や,新規計測手法を利用した研究所内外の共同研究を進め,新規分野の開拓を行う。
[ナノ触媒・生命分子素子研究部門]
21世紀を迎え,今日の研究支援機器の発達などに伴い,従来は均一触媒と捉えられてきた溶液相における触媒反応 特性のより包括的な理解(分子集合体,コロイド種などを含む)や,不均一触媒(固体触媒,ナノ粒子触媒など)の 分子レベルでの理解が可能となりつつある。また生体系触媒機能に見られる複雑な分子,電子,エネルギーの授受は 理想的化学変換のショーケースと捉えることができる。これら生体分子素子の働きを分子レベルで俯瞰しそのシステ ムをフラスコ反応として取り出す試みは,新世代の触媒システム・化学変換工程の開拓に直結する。これら生体触媒 の機能発現に決定的な役割を果たしているのもまた液相における分子レベルのナノ構造である。
触媒化学の鍵を握るのはナノスケールでの構造的情報であり,もう一つは分子,電子,エネルギーの流れに起因す る分子のインターラクティブな動的挙動や空間的な不均一性である。すなわち今や触媒化学における均一−不均一,分 子性−固体,などの境界は混然と成りつつあり「ナノ」というキーワードの下で本質的な理解が進みつつある。本研 究部門では分子科学者の視点からこれらナノスケールで触媒化学を見つめ,理解し,設計し,その構造−機能の新局 面を開拓する。
今後は,分子レベルでの化学現象の理解・設計・開発を進めつつ,特に従来の単位工程としての化学変換反応に留 まらず,より大きな化学変換システムの開発研究に邁進する。それら化学変換システムを司る触媒などの機能性分子 には複合的機能の集積化が求められることから,従来の小分子レベルでの設計を越え,ナノスケールでの機能分子開 発が必然的に要求される。
また,機能開発と並行して学際的連携によるナノスケールでの分子挙動に基づく新分野の開拓を目指す。特に本部 門で開発する新物質を基盤とすることで,既存物質系の研究では到達しがたい独自の分子科学を創成する。
[ナノ光計測研究部門]
金属ナノ構造物質は,不均一触媒反応においてきわめて重要な役割を果たしており,また,プラズモン共鳴に基づ く光電場強度の増強など分光学的,および,光化学の立場からもきわめて興味深い物質である。本研究部門では,金 属ナノ構造物質の構造,物性,および,反応性にわたる総合的な研究を展開し,サイズ特異性・サイズ依存性の発現 の起源を追求する。
金属ナノ構造物質の調製方法としては,よくコントロールされた金属酸化物表面への真空中での金属蒸着などのド ライな環境の下で行うものと,有機単分子膜に保護されたコロイド状の金属ナノ構造物質を溶液中で調製するウェッ トな方法などを採用する。特に後者の方法では,原子レベルでサイズ制御された金属クラスターを系統的に作りわけ が可能であり,この利点を活かした精巧なモデル構造体の構築を目指す。
調製された金属ナノ構造物質の幾何学的構造は,T E M,S T M,A F M などにより明らかにすると共に,その電子構造 は紫外光電子分光,2光子光電子分光などにより明らかにする。特に,この物質の光非線形効果や光化学において重 要と考えられる電子ダイナミックスをフェムト秒時間分解2光子光電子分光によって解明する。
金属ナノ構造物質表面での反応性を明らかにするためには,まず吸着種の同定とその吸着状態を明らかにする必要 がある。このために,反射赤外吸収分光や和周波発生分光を行う。特に,後者はピコ秒の時間分解能を有するため,金
属ナノ構造物質表面での反応における中間体の検出に適しており,これらの知見から反応機構の解明,および,反応 の制御法の開拓を行う。また,これらの基礎的な知見に基づいて,金属ナノ構造物質と有機分子からなる触媒系を設 計・合成し,均一系での触媒反応過程を A T R -F T IR などを用いて in-situ に追跡する。
5-1-2 ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設備等の集中管理
・新規大型機器導入の努力と,既存機器の効率的維持管理
全国の大学における研究環境を見ると,およそ1億円未満の価格帯の中型機器を揃えて全国共同利用に供する必要 性は減ってきたと認識している。ナノ支援により導入された 920MHz 核磁気共鳴装置(NMR )は,主にナノセンター の職員により維持管理されているが,その価格や維持管理に必要な資源の大きさから考えて,全国共同利用として重 要な設備である。現在,先導分子科学研究部門(客員研究部門)の加藤教授,笹川助手を中心として,技術職員1名 と J E OL からの出向職員1名により全国共同利用サービスを行っている。利用者は,全国から来て頂いており,物理時 間でほぼ 100% の利用率を誇っている。サービス内容に対する評価も高く,全国で唯一の共同利用高磁場 NMR として 重要視されている。今後予想されるマシンタイムの混雑を解消するために,同等の分光器を持つ 600MHz 程度の NMR を補助機として導入予定でいる。また,今後の発展や高度の共同利用体制を維持するために NMR を用いた研究をする 教育研究職員を常勤職員として採用することの重要性も認識している。
E S R も,分子研が誇る大型装置のひとつであり,これを用いた研究をする教育研究職員の重点化と装置の更新の必 要性も認識している。
これまでに導入されている機器も,共同利用の実績から判断して必要度が高いと思われる機器については,重点的 に更新・改良を行うことにした。利用度が低い装置については,修理が困難になった段階で,廃棄もしくは研究グルー プ等への移管をすることにした。
新規の共用中型∼小型装置をどのような基準で導入し,どのような体制で維持管理するかについては,今後更なる 議論が必要である。
また,NMR 以外の大型機器の導入についても,次のような設備の導入に努力する。
・ナノファブリケーション設備の導入
既に全国の大学には何カ所かにナノファブリケーション設備が導入されているが,分子研の研究環境に存在するこ とで初めて可能になる研究テーマがある。これが,新たなナノサイエンス研究の芽になることは間違いないと考えて いる。
・独自装置の開発とその共同利用の可能性の探索
独自装置の開発は研究そのものであり,その成果を共同利用に供することには抵抗があることが多いが,最先端研 究において本当に重要な装置・設備は市販していない可能性が高い。そうした装置・設備を共通性の高い予算で作成 して,共同利用に供する可能性を検討することも必要であると考えている。
・技術職員の充実,維持管理予算の拡充
高度の設備を最大限に利用するためには,高度の技術的サポートが必要となる。こうした技術支援を行う人材の探 索,養成を行い,その技術力にふさわしい処遇を用意することが今後益々重要になる。また,これらの大型機器はそ の維持経費も大きく,これまでの維持管理予算の範囲ではカバーしきれず,研究経費に食い込みつつある。こうした 事態を改善するための予算処置が必要となる。
・明大寺地区のヘリウム液化機について
明大寺地区のヘリウム液化機は,設置後既に17年が経過しており,できるだけ早期の更新が必要である。
他の大学・研究所から見た場合の,共同利用研の魅力は,単に大型設備がそこに有る事ではなく,その設備を最大 限に活かして高度の研究を行っている研究者が周辺にいることである。そのためには分子研の独自性を活かした設備 の開発・導入と,既存大型設備の性能を最大限に活かせる人事交流の両面が必要であり,そうした観点で運営を行っ ていきたい。
5-2 極端紫外光研究施設(UV S O R )
現在,文部科学省の科学技術学術審議会・研究評価部会・次世代放射光源計画評価作業部会及び日本放射光学会の 先端的リング型光源計画特別委員会で UV S OR 施設を含む既存放射光施設についても検討を行っているところである。 このような背景の中,平成18年2月10日 UV S OR 運営委員会で UV S OR の光源加速器およびビームライン利用研究の 将来計画について議論した。その結果をホームページ上で公開し,利用者の意見も聴取した。以下はそのまとめであ る。
5-2-1 光源加速器の将来計画
2003年に実施した大規模な光源加速器改造及び挿入光源の更新,それに引き続く高周波加速空胴の増強により UV S OR は UV S OR -II へと生まれ変わり,電子ビームエネルギー 1 GeV 以下のシンクロトロン光源としては今や世界で も最も高輝度(低エミッタンス)となった。このエネルギー領域ではスウェーデンで建設中の MA X -III が UV S OR -II を 上回る低エミッタンスとなるものと予想される。今後も世界最高性能の光源性能を維持し,さらに,この高性能を利 用研究に最大限活かしていくために,光源加速器群の高度化を継続する。その骨子は
①トップアップ運転の実現
②ラティスの再改造による高輝度化
③加速器の再配置によるアンジュレータの増強
である。これらを実現することで UV S OR -II は次世代光源 UV S OR -III へとステップアップできる。その一方,UV S OR 施設の特徴となっている新しい光発生法に関する開発研究をさらに推し進めていく。以下では各項目について説明す る。(図参照)
(1) トップアップ運転の実現
トップアップ運転とは,寿命により時間とともに強度の低下する電子ビームに絶えず電子の補給を続けることでビー ム強度を一定に保つものである。ビーム入射による中断なしで利用研究が行えるため研究の効率が向上することはい
うまでもなく,シンクロトロン光強度が一定に保たれることで測定条件が全く変動しないことからデータの質も格段 に向上する。
トップアップ運転を実現する上で,ハードウェア面では,電子入射器のフルエネルギー化と放射線遮蔽の増強の2 つが必須である。現在,入射器の最大エネルギーは 600 MeV であり UV S OR -II に入射後,750 MeVまで加速している。 入射器の設計を見直した結果,電磁石電源の増強のみで 750 MeV まで最大エネルギーを上げることが可能であるとの 見通しを得た。2006年夏に電磁石電源の更新を行う予定で既に作業を開始している。一方の放射線遮蔽の増強につい ても段階的に進めており,2006年夏に完了する予定である。その後1年程度をかけて,入射路のフルエネルギー化,イ ンタロックシステムの構築,入射効率向上のためのマシンスタディなどを行い,技術的な問題を解決した後,必要な 認可を受け,ユーザー運転に導入することになる。
(2) ラティスの再改造による高輝度化
ラティスの再改造の中心は,2003年の高度化改造で手をつけなかった偏向電磁石を更新し,複合機能型とするもの である。ビームラインへの影響をなくすために偏向半径を従来と同じ値に保ちながら,磁極形状をテーパー状にする ことでビーム収束力を発生する。励磁用電源は現在のものがそのまま使えるように設計する方針である。また,真空 ダクトも現状のものが使用できる見通しであるが,一部老朽化が進んでいるものについてはこの機会に更新する。こ の改造により現在建設中の MA X -III と同等の世界トップクラスの高い電子ビーム輝度が実現できる。また,一部の収 束電磁石が不要となるために,これらを撤去することで直線部を更に拡張することができる。
(3) 加速器の再配置によるアンジュレータの増強
拡張された直線部を最大限活用するために,ビーム入射点を B 1 − 2 間の短直線部へ移動し,高周波加速空胴など直 線部に配置されている機器類の再配置を行い,4本の長直線部全てをアンジュレータ設置可能とする。最終的に 4 m直 線部4本と 1.5 m 短直線部2本にアンジュレータが設置できるようになる。
増強された直線部のうち1本(B 8 − B 1 間)は長いビームラインの建設が難しいことから,新しい光源開発専用と して整備する。2基のアンジュレータを直列に配置し,自由電子レーザー,レーザー高調波発生,フェムト秒アンジュ レータ光生成,コヒーレントテラヘルツ光生成を実現できるステーションを検討している。B 4 − 5 間に設置され,放 射光利用と光源開発研究に併用されている可変偏光アンジュレータは,B L 5U として放射光利用専用とする。現在,光 クライストロン用となっている磁石配列を純粋なアンジュレータのものに戻すことで輝度及びスペクトル特性が向上 する。
(4) 自由電子レーザーの高度化
自由電子レーザーは,電子ビームの高輝度化により波長 200 − 300 nm の短波長域で 100 mW 超の実用レベルの高出 力が得られるようになった。波長可変性,偏光可変性,更に放射光との完全同期という特性を活かして,希ガスの二 光子励起実験,生体物質への照射実験などに利用されてきた。通常型レーザーと競合する波長域であるが,利用者が 必要とする波長を直ちに供給できる円偏光レーザー光源設備として活用される道が,現在,開けつつある。また,蓄 積リング自由電子レーザーとしては世界的にも最も安定且つ強力であり,共振器型自由電子レーザーの基礎技術開発 を行うための世界的拠点としての役割を担っている。5U は放射光利用専用にし,1U に新たな専用ステーションを建設 する。
(5) 新しい光発生法の研究推進
2005年度より開始した外部レーザーと電子ビームを併用した光発生法の研究では,わずか数ヶ月の研究期間で,コ ヒーレントな大強度テラヘルツ光の生成,コヒーレント高調波の生成に成功し,世界的にもトップレベルの研究が行 えるようになった。無論,国内では他の追随を許していない。これは UV S OR -II のビームエネルギーが低いために可視 領域のレーザーと電子ビームを効率よく相互作用させることができること,UV S OR -II加速器群が比較的小型で小回り がきくために実験装置の構築・立上が極めて短期間で行えることによるところが大きい。UV S OR -II 加速器の特長を最 大限活かせる研究分野であり,また,将来の超高性能電子加速器を用いた短波長コヒーレント光発生の基礎となる技 術開発も含まれており,今後も 1U に拠点を移すなど強力に推進し,小型リングの位置づけを確固たるものにしていく。
5-2-2 ビームライン利用研究の将来計画
分子科学の大きな柱である光分子科学では,レーザー光源・放射光源の性能を活かし切って先端的研究を推進して いくことが目標になっている。現状の放射光科学においては光源そのものの性質が末端のサイエンスを大きく左右す る状況を脱していないため,世界的競争の中で絶えず光源と分光器の性能向上が不可欠である。と同時に光源の特性 を十分引き出すための測定装置の性能向上も不可欠である。レーザーの短波長化は進んでいるが,V UV から軟X線に かけて分光器を使って自由にエネルギー領域を選択できる特徴は放射光以外にはあり得ない。一方,フェムト秒パル スでコヒーレントな特性を持つ光源はレーザー(直線加速器を使った自由電子レーザーも含む)以外にはあり得ない。 このような先端的レーザーの特性から見れば,放射光のパルス特性は前時代的となっており(特に UV S OR のように周 長が短く電子ビームエネルギーの小さな小型リングでは),通常の放射光を利用する限り,連続光的に使ったサイエン スに集中した方がよくなってきていると考えられる。
UV S OR -II への高度化の前までの UV S OR 施設では光量(フラックス)の多さと得られる光の波長の広さを利用する 典型的な第2世代光源における研究が中心であった。UV S OR 光源加速器のラティスは C hasman-Green型といって直線 部を多数持てるいわゆる第3世代高輝度(低エミッタンス)光源の基本形になっているが,偏向電磁石からの放射光 を専ら利用してきた流れではその特徴を生かし切ってこなかったことになる。世界的な主流が第2世代光源から第3 世代光源に切り替わり,直線部に挿入したアンジュレータの高輝度性を利用した高分解能分光研究にシフトしている 中で,UV S OR 施設でも5年ほど前から光源加速器を本来の第3世代光源として強化し直す高度化の検討を進め,平成 14年度にはその予算が認められた。UV S OR -II に生まれ変わってからは,世界トップクラスの高分解能分光研究に重点 を移しており,光源の高輝度性を十分引き出すためのビームライン(分光器と測定装置)の性能向上を進めてところ である。
(1) アンジュレータ利用研究
現在,ハードウェア的には 4 m の長直線部が3カ所,1.5 m の短直線部が2カ所に通常のアンジュレータが挿入でき る。現在建設中のものを含めると残されるものは 1.5 m の短直線部が一カ所だけである。
浅い V UVアンジュレータ B L 7U 高分解能固体光電子分光
深い V UVアンジュレータ B L 5U 高分解能固体光電子分光,新しい光発生法の研究(F E L等) 軟X線領域アンジュレータ B L 3U 高分解能光電子・吸収・発光分光
軟X線領域アンジュレータ B L 6U 分光ラインは未設置 未設置直線部 B L 4U
B L 7U
現在建設中の B L 7U は固体物性研究で最も重要なフェルミ端∼価電子帯の高分解能光電子分光実験を可能とする国 際的に競争力のあるアンジュレータビームラインであり,深い V UV 領域のアンジュレータ光を利用できる B L 5U とは エネルギー領域が相補的で,6 eV∼ 40 eVをカバーする。第3世代高輝度 V UV ・軟X線光源計画が東京大学の事情で 頓挫したために,UV S OR で早急に対応すべき研究分野となり,施設利用が前提になっている。ただし,国際的に競争 力のあるラインなので,以下のような運用を当面考えている。
・立ち上げ後2∼3年間は優れた所外研究者とともに協力研究や課題研究を中心に成果を挙げる。
・その後,施設利用で利用者を拡大する
B L 5U
既存の B L 5U は 10 ∼ 250 eVの広いエネルギー範囲をカバーし,円・直線偏光が使える施設利用汎用アンジュレー タビームラインである。末端の装置とアンジュレータはそのままで現分光器さえ高度化すれば国際的に競争力のある ラインに生まれ変わる。しかし,B L 7U を作る以上,B L 5U は当面運用を止め,その維持費運用に加え,B L 5U の末端 の装置を B L 7U で転用して使うこと,また,アンジュレータは自由電子レーザー等,光源グループの R & D で利用して いくことを当面の方針とした。ところが,その後の見積りで B L 7U 用に装置を改造すると予算がかなりかかることが 判明した。また,B L 7U があったとしても 40 eV∼ 250 eV の領域の固体研究用アンジュレータが国内的にも非常に少 なく,分光器を高度化しなくても需要が非常に高いことも確認された。さらに,光源グループによる新しい光発生法 の開拓的研究を発展させて実用フェーズまで持っていくには新たに B L 1U で展開した方が有利であるとの判断もなさ れた。以上の結果,B L 7U の末端装置は B L 5U からの転用ではなく新たに導入することにし,B L 5U は現状で利用を続 け,B L 7U 建設後に予算を獲得して分光器を更新する方針になった。
B L 3U
B L 3U は S Pring-8では利用が不可能な低い軟X線領域をカバーするもので,世界トップレベルの分子科学研究を展開 するために他にない超高分解能装置(クラスター光電子分光装置と軟X線発光分光装置)を開発整備しているもので ある。所内研究・協力研究用ラインであるが,今後,装置が順調に成果を出せるようになった暁には施設利用的な利 用も考えていく。
B L 6U、B L 4U
B L 6U には B L 3U と同じタイプで長さが約半分の真空封止軟X線アンジュレータが設置されるが,当面,スリットレ ス分光器導入のためのビーム位置精密制御に関する R & D のために使う。もともとは R & D のために製作された真空封 止アンジュレータ1号機として B L 7U に設置されていたが,R & D で使う前に所内研究者側の強い要望で照射ライン化 されたので,R & D を行う時間がとれなかったものである。1,2年の R & D 後,具体的な分光器の建設を考える。B L 6U 分光器新設と B L 5U 分光器更新の優先順位は,今後,放射光科学の動向や UV S OR 利用者の動向を見極めて決める予定 である。
B L 4Uの建設はさらにその先になると考えているが,挿入光源や分光技術の開発研究も見極めながら将来計画を立案 する。
(2) 新しい光発生法による利用研究開拓
すでに述べたが,現在,B L 5U を使って行っているいろいろな新しい光発生法研究は B L 1U に最適な挿入光源を建設 することで新たな展開を図る。その際,B L 1A は移設することになる。F E L については 200 nm 以下を実用モードにし て,超高分解能光電子分光や価電子帯の表面磁性顕微分光などの開拓研究を行う。また,大強度コヒーレントテラヘ ルツ光による伝導電子励起分光も実現させる。高調波発生やフェムト秒パルス発生などに対応する利用研究も考えて いく。
(3) 偏向電磁石ビームライン利用研究
アンジュレータラインの強化によりアンジュレータで行うのと同じ種類の実験を偏向電磁石ラインで行う意義はな くなった。その一方で高輝度化によって,ビームの広がりが小さくなったため偏向電磁石からの放射光を水平分散 200 mrad以上でも非常に精度良く集光することが可能になっている。通称マジックミラーと呼ばれるミラーで集光する。そ のことを生かせば偏向電磁石ビームラインであっても以前よりはるかに高フラックスで高分解な実験ができる。今後 は,水平分散を小分けにしてビームラインをむやみに増設することはせずに,マジックミラーを導入して,8カ所の 偏向電磁石にはそれぞれ分光器を1基ずつ設置する方針にしている。ビームラインの名前の付け方もアンジュレータ ラインは U,偏向電磁石ラインは B として,統一を図る。直線部で挿入光源を入れていないところでは U の代わりに Aの名前を使うラインが若干,残っているが,今後,挿入光源の導入計画に合わせて廃止か空いた B ポートに移設す るかを考える。この方針によると8カ所の直線部と8カ所の偏向電磁石部に最大16基の分光器が入ることになる。現 在,ビームラインは13本(施設利用9本、所内研究・協力研究用4本)まで絞り込まれている。
B L 6B
マジックミラーを使った赤外・テラヘルツ領域の施設利用分光ラインである。放射光によるテラヘルツ分光ライン としては世界最強であり,高輝度性を利用した顕微分光などイメージング技術も併用して利用研究を拡大していく。
B L 1B 、B L 7B
V UV の浅い領域をカバーする施設利用分光ラインである。同じエネルギー範囲のアンジュレータライン B L 7U は高 輝度を要求する高分解能光電子分光を中心にしているが,B L 1B ,B L 7B は輝度を要求しない光吸収・発光分光を中心 としている。V UVレーザー固体素子の評価,物性基礎データ測定,材料評価にルーチン的に利用している研究者が多 い。可視・紫外から真空紫外まで基本的な光学的性質を押さえるのに不可欠な汎用ラインとして重要であり,他施設 は力を入れていないこともあり,UV S OR で今後も維持の必要がある。
B L 5B 、B L 8B 2、B L 2B
これらの分光ラインでは V UV から浅い軟X線がカバーされる。例えば,炭素で考えると,価電子準位と内殻電子準 位のギャップに当たるエネルギー領域であり,価電子のイオン化や高い励起を起こす。同じエネルギー範囲の施設利 用アンジュレータラインとしては B L 5U がある。B L 5U は高分解能光電子分光中心に利用が図られているのに対し,施 設利用ラインの B L 5B と B L 8B 2 ではそれぞれ特徴的な利用がなされている。B L 5B は機器校正用装置が常設されてい るユニークなラインであり,反射率の測定などが行われている。この種の実験では高いエネルギー分解能を必要とし ないので,分光器はかなり古くなってはいるが,当面,そのまま維持することを考えている。B L 8B 2 では放射線損傷
や帯電,真空汚染などの可能性があって取り扱いの難しい有機薄膜・界面の研究を中心に精力的に光電子分光実験を 行っている。分光器は建設後20年経っているが,これまで光学素子の再コート以外の手は入れずに,末端の装置の整 備を行ってきた。分子科学の一つの重要分野を支えている他にない装置なので,施設利用の需要はいつも 100% を越え ている。施設としては,分光器の老朽化が深刻になる前に再構築について考えておく必要がある。また,B L 2B は比較 的新しい所内研究・協力研究用ラインであり,現在,気相分子を対象とした研究が行われている。UV S OR が得意とす るこのエネルギー領域で多様な利用研究に対応するためには,将来的にB L 2B の施設利用ラインへの転用も視野に入れ ておく必要があろう。
B L 8B 1、B L 4B
偏向電磁石部で炭素∼酸素の内殻電子準位をカバーできる軟X線ビームラインは2基ある。同じエネルギー範囲の アンジュレータラインとしては B L 3U がある。施設利用ライン B L 8B 1 は主に固体の吸収分光に利用されているが,分 光器が老朽化しており利用者の増加は望めない。B L 8B 1 と B L 8B 2 はブランチを作らない方針もあり再構築を考え始め る必要がある。一方,B L 4B は比較的新しく建設された所内研究・協力研究用ラインであり,現在,活発な協力研究・ 民間利用によって気相分子,表面磁性,生体関連分子,半導体材料,触媒等に関する研究が行われている。将来的に は施設利用ラインへの転用も視野に入れているが,B L 4B は現在 100% の利用率(需要は 150% 程度ある)なので,B L 8B 1 をB L 4B に切り替えるだけでは済まない。化学にとって重要なこのエネルギー領域で多様な利用研究に対応するために は,他施設との競争力を見極めながら新たに偏向電磁石ラインあるいはアンジュレータライン(B L 6U)の建設も検討 する必要がある。
B L 1A
UV S OR で最も高エネルギーの軟X線を供給する二結晶分光器の施設利用分光ラインである。UV S OR のような低エ ネルギー施設ではあまり得意とするエネルギー領域ではなく現在は1基だけになった。他施設では使い勝手がよくな いためか,現在,固体材料や触媒関係の比較的若手の研究者が固体の吸収分光を中心に利用している。今後も汎用ラ インとしての整備が必要であろう。ただし,U V S ORの臨界波長よりも短波長側は光強度の点で非常に不利であり, B L 1A ではシグナル強度を稼ぐために試料を塗布した電子増倍管を使った測定が行われている。このような測定方法は 改善の余地がある。光源の方で強度を稼ぐにはマジックミラーを用いてフラックスを上げるようにするか,挿入光源
(B L 4U で対応可能)を利用するかが考えられるが,一方で分光結晶の放射線損傷が大きな問題になる(過去に UV S OR でのウィグラー利用で経験済み)。回折格子の利用も検討する必要がある。光源グループの B L 1U 建設計画に合わせて 移設か再構築かを考える。
5-3 分子制御レーザー開発研究センター
5-3-1 分子制御レーザー開発研究センターの現状と今後
分子制御レーザー開発研究センターは,旧機器センターからの改組拡充によって平成9年4月に設立された。分子 位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー開発研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所 内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用機器,小型貸出機器を保有,維持管理し,利用者の便に供してい る。
各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,またセンター共通の技術支援には技術課の3名の技術職員が当たっ ている。放射光同期レーザー開発研究部は猿倉助教授が担当し,分子研 UV S OR との同期実験に向けた基礎的レーザー 光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラヘルツ光源の開発などの成果を挙げており,こ れらの成果をもとに平成18年1月から大阪大学レーザー・エネルギー学研究センターに教授として転出した。特殊波長 レーザー開発研究部は平等助教授が担当し,分子科学の新たな展開を可能とする波長可変な特殊波長(特に赤外域) レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発を行っており,産業界からも注目される成果を挙げてい る。分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間的特性を制御したレーザーの開発と反応制御実験を 目的として設置されたが,佐藤助教授が平成12年に転出した後,現在欠員となっている。
このように,3つのうち2研究部の担当者が転出したことは,本センターの活動の低下を余儀なくするものである が,今後の本センターのあり方を根本的に見直す時機が到来したともいえる。今後のあり方については,本センター の外部評価を昨年度行い,当該センター運営委員会で議論を行った。その結果,形骸化した現行の課題研究を見直し, 現研究部にとらわれず,研究所内の光科学関連研究者を結集した新たなセンター組織作りを検討すべきであるとの強 い提案があった。
これを受けて,当該センターの専任教員とレーザーを中心的に用いて研究を行っている研究系の教員,特に,エク ストリームフォトニクス事業に参画している研究者を交えた検討会を開催し,当該センターの今後のあり方を議論し た。その結果,センター専任教員から分子研で開発された新物質を用いることも含めたレーザー開発に特化したセン ター案も出されたが,光源のみを開発するセンターではなく,分子科学における広い意味での光科学研究の新しい展 開の拠点としての研究センターとすべきであるとの意見が多数を占めた。
現在,分子研全体の研究系・施設の見直しが進んでおり,研究の柱の一つとして「光分子科学領域」を設置するこ とが検討されている。この領域にはレーザーを用いた分子科学研究者が当然参画し,これらの研究者群が当該領域に おいて中心的な役割を果たすグループの一つとして活動することが期待されている。したがって,上述した光分子科 学というより広い分野の研究を支え,また,それを発展させるための中核となるセンターとして当該センターをとら えることは,時宜にかなったものといえよう。今後,研究系・施設の組織見直しの進展にあわせてさらに具体的なセ ンターのあり方を検討する予定である。
5-4 装置開発室
5-4-1 施設利用
装置開発室は,平成17年度後期より所外からも実験装置の開発・製作を施設利用として受けることとし,17年12月 末までに9件の利用申請を受け付けた。申請の内容はいずれも分子科学の面白い問題に関係するものであり装置開発 室職員の技術向上にはプラスであった。また,基礎生物研究所などからも申請を受け,自然科学研究機構内にも貢献 する実績を積みつつある。施設利用として所外からの依頼業務を受ける体制に変更する事にともなって装置開発室の 運営委員会を新たに設置した。これまでの運営委員会は各研究系および施設から選出された所内委員で行われていた が,所外の研究者および技術者を含めた委員会とし,運営委員会規定も新たに制定した。
5-4-2 技術職員
装置開発室の担当する領域は機械工作,電子回路工作,ガラス工作の三つがあり,依頼業務の7∼8割を機械工作 が占めている。装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置を開発すると同時に,日常の実験に必要な機器類 を迅速に製作するという二つの役割をもっている。これらの業務は先の割合ように機械工作に集中し,特に迅速性に 対して不満の声もある。技術職員数の配置は機械7(短時間契約職員2含む),電子回路3,ガラス1とした配置となっ ており,人員数の比としては妥当であるが個々の技術職員の技術力,業務に対するモチベーションに差があることが 問題点の一つになっている。事例として,迅速な処理業務が求められるあまり,技術力や処理能力のある一部の中堅 職員に様々な業務が集中し,研究支援の貢献度が高いにもかかわらず,旧公務員制度の範囲でしか評価されないため
「やる気」を失ってしまう事があった。
今後,所内の支援業務や施設利用をさらに充実させて行くためにも,上記の問題点に対策していく必要がある。
5-4-3 基盤技術
装置開発室は UV S OR 施設の創設とともに超高真空技術や精密駆動・制御を手がけてきた事で,これらの製作技術は 装置開発室の基盤技術として持つことができた。しかし,この分野は現在,民間の方がかなり成熟し一般化してきた ため,よほど特殊な物でない限り装置開発室でなければできない技術としての位置づけが薄れている。そこで研究系 の要請に応えられる新たな基盤技術を確立していく必要性があった。現在, 機械グループはマイクロガラス流路, PD MS 用の微細構造金型,超精密スリットなどの開発として「マイクロ加工技術」,電子回路グループはバイオ関連な どの研究をターゲットとした小型化するアナログ・デジタル混在の「大規模集積回路設計技術」を新たな基盤技術と して進めている。
5-4-4 設備
分子研創設時の機械設備がいまだ現役で使用されているものがあるが,一部には老朽化も進んだ物もある。また,新 技術に対応していくためにも最新の機器を導入する設備更新は重要な課題である。平成13年度から精密ワイヤー放電 加工機を導入しその後,測定顕微鏡,C NC 旋盤が設備され16年度末には小型の走査電子顕微鏡が導入された。17年度 末にも微細加工における評価能力を強化する測定設備等が所長の配慮で設置が予定されている。
5-4-5 外部運営委員からの意見
前述した項目1∼3に関して17年度に行った装置開発室運営委員会での議論を総括して,外部委員より将来計画を ふまえた意見をまとめて頂いたので以下に記載する。
[外部委員A] 1.組織の意義
委員長のご意見と同じく,独創的な研究を行うためには,短期間で実験装置を作ることのできるサポート体制がぜ ひとも必要である。外部委員としても,上記の観点から,ぜひこの組織が発展することを希望する。
問題点の整理
委員会で指摘された問題点:評価を公平に行うことが難しく,待遇が働きを反映していない。このためよくできる 人がやる気をなくしやすい。
問題点の解決のために
上記はどの大学においても共通する問題である。まず,楽しく仕事ができるよう,システムを改善する必要がある。 楽しければやる気を持って仕事に取り組むことができる。また,働きに対し評価を行い,待遇に反映できるようにす ることが重要であろう。
①できるだけ興味の持てる仕事を受けられるよう,事前協議を綿密に行う。装置開発室の力が発揮できる仕事を優先 し,メーカーでできる仕事の優先度を落とす。このためには良いコーディネーターが必要であり,その能力開発が必要。
②能力評価,仕事内容・時間などの評価を通じて,待遇を決める。資格取得(情報処理技術者など)を奨励して,評価 の一つとする。
③作成した装置を利用した研究の成果を発表する際には謝辞をつけるよう,依頼を受けるときに取り決める。謝辞の 数を評価に使うことができ,また装置開発室の広報にもなる。
④外部の仕事を請ける場合,秘密保持協定(今までに蓄積したノウハウの拡散を防ぐ)を結び,特許取得も奨励する。 また内部・外部を問わず,作成した装置を利用した研究の成果を発表する際には謝辞をつけるよう取り決め,評価・ 広報に役立てる。
⑤外部資金導入も積極的に行う。外部資金導入を進めるために,共同利用研究施設としての考え方の整理が必要。行 うなら,資金受け入れのための規則整備を行う。会社を作って外部からの委託に対応することも検討する価値があ ろう。
⑥外部資金導入額も評価に利用できる。
⑦人件費固定,年次削減というネガティブ思考ではなく,外部資金獲得,特許獲得などを通じ,組織が発展できるよ うに,外部資金導入を進めるべき。
⑧岡崎近辺には自動車産業などで熟練した技術者が多いので,特にリタイアした技術者に活躍していただくことも,組 織を発展させるために考えていただきたい。これを行うためにも別会社を作ったほうがやりやすいのではないか? しかし技官の人は兼業などが制度上難しいので,外部の仕事を受け,働きに応じて見返りを受けられる制度を作 ることができるかどうか,要検討。
[外部委員B]
装置開発室運営に関する意見を述べたいと思いますが,その前に私どもの職場の現状について報告いたします。技 術部は5課20係47名より構成されています。部の仕事は,大型ヘリカル装置(L HD )に関しての仕事が中心となり,建 設,周辺装置製作,運転業務を研究系と分担して行っています。装置が大型なために,課や係でグループを組んで業 務を行うことが多く,部課長制が機能しております。例えば研究者から要望が出された装置を L HD に取り付ける場合 には,その装置が実際に取り付け可能かどうかを装置技術課が周りにある装置との空間的な干渉や構造などのチェッ クを行い問題が無ければ,研究者と共に取り付け作業を行いますが,装置が大きいために 30t クレーンを使用し,免許 保持者が運転台で操作し,玉がけ者が補助者と協力して装置に玉がけして運転者に無線で操作を指示します。それと 作業の安全を監視する監視者が付きます。このように作業が数名の連携で行われます。
L HD 建設時にはプラズマ点火の時期が決まっていたので,約10年間にわたり年度毎の工程表を作成し,技術部でも 毎月日程の管理を行い業務に遅れがある場合には,人の配置換えや増員するなどして業務の遅れがないよう,工程管 理はかなり厳しくなされて来ました。運転期に入っても L HD 実験成果は科学技術総合会議(首相が議長)で審査され 4段階評価を受けて,その成果結果で予算に影響が出ますので,実験期間中は実験が出来る状態に装置を保つことは 技術部として最大目標とし,真空漏れや液化機故障時は装置技術課を中心にチームを組み,休日・深夜を問わず復旧 に努めています。
加熱技術課は大電力加熱装置を,計測技術課は大型プラズマ計測装置を,また制御技術課は中央制御装置や超伝導 コイルに流す電流制御について建設・運転などを担当しています。また定まった運転については技術職員とほぼ同数 の運転員が従事しています。
分子研装置開発室の業務は,私どもの職場の技術部製作技術課の業務が似ていると思います。製作技術課は資材管 理(定員1)機械加工(定員2名)と電子回路(定員1,支援職員1)の3部門があります。15年まではガラス工作 担当者が居たのですが,定員削減もあり業務量を考慮し人員の採用を止めました。装置開発室とは工作部門で今まで も交流があり,特に相互に自分のところに無い工作機械について相互利用しようとしてきました。
私どもの研究機関の研究者は分子研に比べて研究者の異動が少なく,自分で装置の開発を行うことが多いために仕 事の量はかなり多くあります。特に実験開始前の7∼9月は業務量が増加して超過勤務時間も多くなりますので部品 の外注化を進めています。
装置開発室の活性化についてですが,技術課組織全体とも絡んだ問題となると思います。独立した組織である以上 は,人事や予算等の執行について権限が必要と思います。私どもの職場では部課長制が業務の性格上機能しており上 司が部下の仕事の評価が出来ますので,その評価に基づいた人事を行っています。また技術部予算を請求し研修や運 転業務に必要な物品の購入にあてています。予算規模としては装置開発室と同じ程度ですが,工作機械などの購入に 対しては別途予算請求をしています。
・評価と昇進
技術職員が非常に興味のある技術課題を持ち自主的に研究者と連携を持ちながら,研究に役立つ技術業務を進めて 行くのが理想的ですが現実にはそうは行かないと思います。その場合に技術職員にどの様にやる気を持たせるかが問 題となってきます。上司が部下の仕事を見ていて評価し,その評価により昇進していく仕組みをつくることですが,評 価により昇進,昇格を決める場合には年功序列を崩さざるを得ないと思います。
・マネッジメント
製作する装置が大きくなると一分野の技術,一人の技術者のみでは対応が出来なくなります。そうした場合にポス トの上の者は他分野の技術と複数人の技術職員を取り纏めて業務を行うことになりますが,全体の技術を知っていて 適切に業務を振り分けて工程を管理できる人材の育成も大切なことになります。
・超過勤務
また業務が増えた場合の超過勤務手当ての支払いですが,民間同様,業務報告かあるいは超過勤務命令書にもとづ いて支払われるべきだと思います。私どもの研究機関では技術部だけでなく管理部も実質超過勤務にもとづいて超過 勤務手当てを支払っております。これは法人化にあたり,技術部の会議の中で方針を出して実行したものです。私ど もの研究機関ではプラズマ実験期間中は朝8時35分の実験会議から始まって実験終了は18時45分で,その後超伝導コ イルの電流立ち下げや装置の点検,コンディショニングなど22時になるので技術部として8時間の3つの勤務時間パ ターンをつくり交代勤務制を実施しています。
これらの対応は装置開発室だけで実行した場合に合意が得られるかという問題があるので,課全体で考えなければ ならない課題だと思います。
・研修
技術力向上のためには技術研修が不可欠であり,公的機関・民間で実施されている研修に参加する機会を多くもつ べきと考えます。また他機関の技術職員で技術を持っている人がいれば技術交流できるようにすべきと思います。装 置開発室は過去に名大や北陸先端大学と人事交流を行ってきた経験を今後も活かすようにしたら良いと思います。
以上装置技術室についての提案を申し上げましたが,あまりまとまりのない提案となってしまい申し訳ありません。
[外部委員C]
分子科学研究所装置開発室は,独創的な技術を修得するため,外部からの業務も積極的に受け入れ,分子研内部の 要望に対しても,良く貢献されていると思います。また,研究者への技術支援の他に,技術研究会の開催,技術開発 研究費の獲得,アニュアルレポートの作成,他機関との人事交流,共同開発等全国の同様な組織の中では非常にアク ティビティの高い組織であります。自然科学の研究を遂行する上で,今後とも装置開発室の果たす役割は極めて重要 であります。
(今後の提案)
・ 分子科学研究所の研究の質が常に世界最先端であり,そのような研究者からの技術的要望があり続けることが重要で ある。装置の設計・製作の内製と外注の住み分けをどのようにするか考え,民間になく装置開発室で固有技術を確認 することが将来を考える上で必要である。装置開発室で技術力を高めた技官を逆に数年単位で個別研究室に派遣して より技術を高度化する制度を作ってもよいのでは
・ 装置開発室においては,設計・開発と加工の分業制が徹底しているので加工技術や真空・極低温技術等の未熟なス タッフが設計や開発を担当することになり,技術コンサルタント業務や技術開発業務をさらに向上させるために,内 部でのスタッフの教育システムを再検討する必要がある。設計・開発スタッフにおいても高度な技能を持つ職員(現 在の機械工作担当の非常勤職員)のもとで技術教育を受ける等のシステムも必要である。研究・教育内容の急速な変 化に対し,スタッフの適正な再配置等も必要である。技官の技術力を無駄にしないためにも機構内の交流・移動等配 置換えが容易になる仕組みも必要である。
(外部の依頼業務について)
・ 外部に装置開発室の技術を提供する時は,その論文等においては,その技術の依存度にもよるが,連名を基本とすべ きである。
・ 装置開発室の技術を会社等に自由に流出しないようにある程度の装置設計の権利を保持するべきである
(業務の把握について)
・ 業務報告において,週単位でどの業務に何時間を費やしたかを報告するシステムにして,個人の業務が外部からきち んと見えるようにすること。その業務記録を個人や組織としての業績に活用するべきである。
・ 各スタッフに装置開発室の将来計画案を作成してもらうこと。また,1年間の技術の目標を作成してもらい,1年
(半年)ごとにその達成度を評価し,教育システム等を検討すべきである。
・ 装置開発部門は利益を生み出すことが本来の業務ではないが,今後は企業のような利益を求める概念も必要であり, 年間どの程度の成果を個人や組織が生み出しているのかの試算も必要である。それによって組織や個人の将来計画に 活用すべきである。
・ 法人化とともに,装置開発室でも能力評価が取り入れられる具体的な方策を検討するべきである。
上記のように外部委員を含めた運営委員会の意見等から現在までの運営における課題が明確になっており,特に技 術職員の問題は装置開発室の今後のあり方にも大きく影響する問題であるため,それらに対応する対策を今後行って いく必要がある。
5-5 計算科学研究センター
2006年1月現在の計算機システムの概要を下図に示す。図の左側は2000年3月に導入されたスーパーコンピュータ システムで,図の右側は2003年3月に更新されて山手地区に設置された汎用高速演算システムである。
SGI SGI2800,Origin3800
cco2k1 32CPU cco3k1 128CPU cco2k2 32CPU
cco2k31 128CPU
日本電気
TX-7 64CPU
File Server
Frontend ccfep1 ccfep2
富士通 VPP5000 30PE 日本電気 SX-7 32CPU
汎用高速演算システム
スーパーコンピュータシステム
機構ネットワーク CISCO Catalyst
高速シミュレーション 日立 SR8000 6CPU
システム構成図
スーパーコンピュータシステムは,富士通製 V PP5000 と S G I 製 Origin から構成されている。V PP5000 は 1C PU 当 たりの最高演算性能が 9.6 Gflops のベクトル演算装置30台から構成され,各 C PU に 8 ∼ 16 GB の主記憶装置をもつベ クトル並列計算機である。一方,S G I Ori gi n は 1C PU 当たりの最高演算性能が 0.6 ∼ 0.8 G fl ops のスカラー演算装置 320C PU から構成され,1C PU 当たり 1 GB の主記憶をそれぞれの C PU から共有メモリとしてアクセスが可能な分散共 有方式の超並列計算機である。V PP5000 では高速なベクトル演算能力を活かした大型ジョブの逐次演算処理や8台以 上のベクトル演算装置を使った大規模なベクトル並列演算が可能である。Origin2800/3800はNon Uniform Memory A ccess
(NUMA )方式と呼ばれる論理的な共有メモリ機構を有する。NUMA は主記憶装置が各 C PU に分散して配置されてい るため C PU から主記憶へのアクセス速度が非等価ではあるが,利用者プログラムから大容量のメモリを容易に利用す
ることができるので,大規模な並列ジョブの実行が可能となる。高速シミュレーションシステムの日立製 S R 8000 は, 主に機構内における利用を目的として運用されている。
一方,2003年3月に導入された汎用高速演算システムは,NE C 製 S X -7 で構成される主システムと T X -7 で構成さ れる副システムとから成る。NE C S X -7 は 1C PU あたり 8.8 G flops の最高演算能力を持ち,256 G B の共有メモリに結 合された 32C PU の演算装置から構成され,総合演算性能 282.5 G flops の共有メモリ型ベクトル計算機である。また, T X -7 は 4 GB のメモリを持ち最大 4 Gflops の演算性能を有する C PU を32台搭載したノードを基本単位として構成され ている。本システムは2ノードから成り,合わせて 64C PU,256 GB ,256 Gflops の総合性能を有する分散メモリ型ス カラー計算機である。このうち主システムは高速演算,大容量メモリを活用した大規模分子科学計算に用いられ,ま た副システムは分子科学計算に加え,ホモロジー検索を主としたバイオサイエンス分野での利用に供されている。
2005年度も132の研究グループの総数514名にもおよぶ全国の利用者に共同利用施設として広くサービスを提供し, 計算科学分野の中核的拠点センターとしての役割を果たしている。計算科学研究センターには,超高速コンピュータ 網形成プロジェクト(NA R E GI)のナノサイエンス実証研究のために,2004年3月から総理論演算能力が 10 T flops の 大型計算機システムが導入されている。アプリケーション開発拠点としての研究推進はもとより,事務局と計算機シ ステムの運用という重要な役割を果たしている。
高速パソコンクラスターの最近の普及によりセンターへの期待と役割がこれまでとは大きく変化してきている。こ れに答えるために,通常の研究室レベルでは不可能な大規模計算を実行できる計算環境を提供するために,2006年6 月にスーパコンピュータを更新する。
2006年7月より運用を開始する新システム「超高速分子シミュレータ」は,これまでの共同利用のスーパーコン ピュータシステム(富士通 V PP5000,S GI2800/Origin3800)の後継機である。新システムは,量子化学,分子シミュレー ション,固体電子論,反応動力学などの共同利用の多様な計算要求に応えうるための汎用性があるばかりでなく,ユー ザーサイドの PC クラスターで実行が不可能な大規模計算を実行できる性能がある。新システムは富士通の PrimeQuest と S GI の A ltix 4700 から構成される共有メモリ型スカラー計算機で,両サブシステムは同一体系の C PU(Intel Itanium2) および OS(L inux 2.6)をもとに,バイナリ互換性を保って一体的に運用される。システム全体として総演算性能 8 T flops で総メモリ容量 10 T B yte 超である。
PrimeQuest サブシステムは,64C PU コア /256 GB からなる S MP ノード10台で構成される。演算ノード間は 16 GB /s のバンド幅で相互接続され,大規模な分子動力学計算などノード間をまたがる並列ジョブを高速で実行することがで きる。A ltix 4700 サブシステムは4ノード構成からなり,各ノードは 160C PU コア/ 2,064 GB を有する NUMA 型の共 有メモリシステムである。さらに本サブシステムには,磁気ディスク装置 S GI T P9700 がジョブ作業領域として提供さ れ,実効容量 104 T B および総理論読み出し性能 12 GB /s を有するディスク I/O を実現する。本サブシステムは大容量
(最大 2 T B )の共有メモリおよび超高速ディスク I/O に特徴をもち,大規模で高精度な量子化学計算を可能とする。 新システムの導入にあたって運用面でも,世界をリードする計算科学研究を本センターから発信していくことがで きるよう,大規模ユーザのために新たに施設利用Sを設定する。審査により,年間3−4件程度の利用グループに本 システムを優先的に使用していただき,従来の共同利用の枠を超えた超大規模計算の環境を提供する。また,シンポ ジウムや研究会を開催して人的交流を促進すると同時に,内外の研究者の支援のもとに若手研究者や大学院生の育成 のための教育プログラムを進めて,計算科学の裾野を拡げていく。ナショナルセンターとして大きく機能していくた めに,国内に加えて多国間共同研究など国外の研究グループ(特にアジア地域の研究者)との国際共同研究支援のあ り方を検討していく。これらの実行にはセンターの人的パワーの補強が強く求められている。
5-6 系と施設の在り方等の検討
分子研の今後の進むべき方向とその受け皿となる研究体制(特に研究系及び施設の在り方)を探るために系・施設 の在り方等検討委員会が設置された。委員会メンバーは以下の8人である。
青野重利(岡崎統合バイオサイエンスセンター教授、相関領域研究系教授) 魚住泰広(分子スケールナノサイエンスセンター教授)
大森賢治(電子構造研究系教授) 川口博之(錯体化学実験施設助教授)
小杉信博(極端紫外光科学研究系教授、極端紫外光研究施設長、研究総主幹、委員会まとめ役) 中村敏和(分子集団研究系助教授)
松本吉泰(分子スケールナノサイエンスセンター教授、分子制御レーザー開発研究センター長、人事部会長) 森田明弘(計算分子科学研究系助教授、計算科学研究センター助教授)
4月15日(金),5月27日(金)にそれぞれ2時間強の時間を掛けて,各事項について現状と問題点を洗い出し,そ れらの改善に対する基本方針について議論した。その内容を報告書(案)にまとめ,6月17日(金)に所長参加のも と,さらに3時間以上かけて意見交換し,各事項について現状,基本提案,参考意見をまとめた。ここで報告するも のは2005年6月30日時点のものである。ただし,参考意見部分は,その後,所長が中心になって主幹施設長会議で他 の可能性を含めて具体化への議論を進めている内容を反映していないので,ここでは削除した。今後,教授会議等で も議論を行い,その結果,改組の必要が認められれば,平成19年度から実施に移す予定である。
5-6-1 研究系の在り方
(1) 現状
研究系については創設来,それぞれ長い歴史があり,主幹教授を中心に日本に於ける各研究分野を代表する研究が 推進されてきたが,今や,研究分野の広がりや複合化,複雑化によって,教授あるいは助教授の研究グループを単位 として4グループ程度でひとつの研究分野を構成できる状況ではなくなった。所内での研究系間の交流が盛んであれ ば,現状の組織でも問題はないが,実際のところは研究系間の交流は限定的でしかない。
以前は,研究所の重要事項については研究系が中心になって議論をまとめてきたが,その後,研究グループ数の増 加や研究施設の研究者の増加とともに,議論の単位に施設を含める必要が出てきた。主幹会議も主幹施設長会議となっ た。その結果,研究所としての意見の集約がなかなか難しくなっている。その一方で,岡崎3研究所の連携によって 発足した岡崎統合バイオサイエンスセンターに所属する分子研関係の研究グループは,分子研では分子構造,相関,ナ ノセンターに分散して併任しており,統合バイオ所属の分子研関係の研究グループの意見をボトムアップ的に集約し, それを分子研として議論することが困難な構図が続いている。
法人化後いろいろな雑務を行うことが多くなっている研究主幹は年功序列的に決められており,場合によっては自 分の所属する系とは異なる系の研究主幹を併任することさえある。また,法人化の影響により緊急事項や重要事項に ついては,主幹施設長会議とは別に,機動性のある執行部的な組織(所長,研究総主幹(評価担当),研究連携担当, 人事・広報担当)で議論することが多くなっており(以下では執行部と呼ぶ),系を単位としたボトムアップ的な運営 が必ずしも行われない場面が増えている。